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小川洋子『薬指の標本』

小川洋子『薬指の標本』

 

 

人びとが思い出の品物をもちこむ「標本室」で働く事務員の女性と、その経営者である標本技術士、その二人の日常の中の不可思議。

標本技術士がプレゼントしてくれた靴は事務員の足にピッタリ合っており、やがて足と一体化して脱げなくなってしまうと、標本を持ち込んだ靴磨きのおじいさんが言っている。

閉ざされた、ひっそりとした空間での、あまりにも密やかな二人の愛。

 

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小川洋子『薬指の標本』は、透明感あふれる文章で描かれた短編小説です。
私にとっては、『妊娠カレンダー』よりはるかに興味深く読むことができた小説です。

 

ここには、『密やかな結晶』とおなじく、「身体が消滅していく」というイメージがあります。

 

純文学ではありますが、ここには「ひとつひとつのことが、これからどうなっていくのだろう」ということを推理する読みかたがあり、何者かに対する畏れのようなものが充満しています。

 

読後感。とても上質で、いい小説を読んだという気分になることができました。

 

もうひとつー

この文庫版には『薬指の標本』とともに、『六角形の小部屋』という短編が収められているのです。

これがまた、いいのです。

読む人によって、あるいは『薬指の標本』よりも好きという評があるかもしれません。