小川洋子『妊娠カレンダー』
妊娠し、つわりをし、出産する姉に、毒薬に染まったアメリカ産のグレープフルーツジャムを食べさせ続ける妹。
裏表紙には「妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作」とあります。
小川洋子『妊娠カレンダー』を読みました。
話の筋としては読みやすい作品でしたが、行間から何かしらの意味を読みとるのは、私にはとても難しく感じました。
話の筋で読んでしまう傾向がある私にとっては、やさしくも難しい作品だったのです。
巻末の松村栄子の解説には、
「染色体を静かに破壊し滅びていくしか道はないと彼女は知っている」とか、「おそらく赤ん坊は異常もなく生まれていることだろう。けれども、彼女が赤ん坊の染色体を破壊しようと意識したことは決して彼女自身の中で忘れ去られはしないし、そうであれば彼女の目に映るのは破壊された赤ん坊に違いない」
など書かれていますが、私にはそこまで読み込むことができないのです。
すうっと読めるが、どっこいそう簡単ではない、底の深い小説だと理解しました。
そこにこそ芥川賞を受賞した理由が潜んでいるのでしょう。
先日、小川洋子の『密やかな結晶』を読んで、もっと他の小説も読もうと思ったのです。『博士の愛した数式』だけしか読んでいなかったのですが、もっと小川洋子を、と思ったのです。
もう1冊『薬指の標本』も買ってきました。