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金沢と『三州奇談』の雑記帳   ki-dan.com

乾いた筆致の『今昔物語集』

『今昔物語集』

 

4年前に、金沢駅近くに引っ越したとき、収納の関係でほとんどの本を古本屋に引き取ってもらいました。しかし、どうしても捨てきれなかった本を何冊か手元に置いています。

そんな本のなかに『今昔物語集』があります。
あの「今は昔」で始まる説話集です。
メモを見ると、10年ほど前には、岩波文庫では、本朝部の上・中・下をよく読んでいました。

 

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現代の小説を読むように、すらすらとは読めませんが、注を頼りに、つかえつつ読み進む愉しさは格別でした。

リタイア後、10年ほど前には、大学で学生と一緒に、科目等履修生として、仏教学や宗教学を趣味として学んでいました。
とくに迎講やお練りといったものに興味があって、その関連の話がでてくる「今昔物語集」を読んだのです。

本朝部の最初の(上)に出てくる「聖徳太子、此朝にして、始めて仏法を弘めたる語」をはじめ、不思議な話が続きます。

(上)には、わらしべ長者の話、「長谷に参りし男、観音の助けに依りて富を得たる語 第二十八」があります。このように知っている話の原典が出てくるのも楽しみです。

迎講の関係では、(中)の「摂津守源満仲出家せる語 第四」や「讃岐の国の多度の郡の五位、法を聞きて即ち出家せる語 第十四」などがあり、これらは最も興味がある話です。

さらに郷土の話も出てきます。(下)に「加賀の国の蛇と蜈と争う島に行きたる人、蛇を助けて島に住める語 第九」や「能登の国の鳳至の孫、帯を得たる語 第十二」などは、身近に感じる話です。

さらの(下)の「利仁の将軍若き時、京より敦賀に五位を得て行きたる語 第十七」は、芥川龍之介の「芋粥」の素材で、芥川は「今昔物語集」から「羅生門」、「鼻」などいくつか取り上げ、短編小説にしています。

「今昔物語集」は、多彩な珍談異聞の宝庫として、ときどき拾い読みしています。

カバーに「乾いた筆致で仏と人間の世界を描きつくす」とあるように、悲惨なこと、恐ろしいことをドライに描いているのが魅力です。

今は思い出したように、年に1、2度読む程度ですが、手元からは離せない本となっています。

郷土の『三州奇談』を読むようになったのも、『今昔物語集』を読んでいたことと関連があると思っています。