没法子「しかたがない」―赤塚不二夫
日経電子版の4/29付『春秋』が、漫画家の赤塚不二夫さんについて述べていました。以下は、その後半部分です。
▼赤塚さんは旧満州で生まれ育った。敗戦の混乱のなか、母親に手を引かれ
ての引き揚げが原体験となる。幼い胸に刻み込んだ言葉は「没法子(メイファーズ)」。中国語で「しかたがない」の意味だが、それはあきらめ、投げ出すことではない。悲しみも不条理もすべてを受け入れ、そのうえで前へ歩む。そう受け止めた。
▼会いたい人と会ってはいけない。行きたいところへ行ってはならない。私たちもいま、不条理のさなかにある。災いがすぐには去らない以上は、倦(う)まず弛(たゆ)まず明日へ向かうしかない。そう念じれば少しは気持ちが軽くなるだろうか。赤塚さんは没法子を自分流に訳して、バカボンのパパに言わせ続けた。「これでいいのだ」
私たちは今、コロナ禍によって、「会いたい人と会ってはいけない。行きたいところへ行ってはならない」状況下にあります。
コラムの筆者がいうように「災いがすぐには去らない以上は、倦まず弛まず明日へ向かうしかない。そう念じれば少しは気持ちが軽くなるだろうか」。しかし、そのとおりだというわけには、なれない心境です。
そういわれてもなかなか気持ちは軽くなりません。
それでも、「没法子」(しかたがない)。
あきらめ、投げ出すことではない。悲しみも不条理もすべてを受け入れ、そのうえで前へ歩まなければならないのです。
赤塚さんは没法子を自分流に訳して、バカボンのパパに言わせ続けた。「これでいいのだ」と。
これでいいことはないのですが、それでも前に進もうという気持ちを奮い立たせて、現状を受け入れるしかありません。
気持ちがなえようとしているときに、響く言葉があるものです。