『三州奇談』の現代語訳、あす第1回投稿
このブログのタイトルは、「はてな版 金沢と『三州奇談』」です。
読み返してみると、『三州奇談』については、はじめのころ1回ふれただけで、その後は忘れてしまっていました。
初心を思い出し、これからしばらくは、随時『三州奇談』の現代語訳を投稿することにしました。
『三州奇談』とはー
この『三州奇談』とはどんな本でしょうかー
『三州奇談』は加賀・能登・越中の奇談を集めた江戸時代の奇談集です。
全国各地には、それぞれ興味深い奇談の数々が残されていますが、金沢には『三州奇談』が語り継がれました。
ここには、この地域独自、固有のものがある一方、ほかの地域と共通のモチーフの話も入っています。
『三州奇談』は加賀・能登・越中の奇談集ですが、金沢の話が多くあるなどすこし地域のかたよりはありますが、石川県と富山県の各地域の話が網羅されています。
成立
成立は宝暦から安永年間(1751~1780)とみられており、十八世紀半ばすぎから後半にできあがりました。
本編は正編99話、続編50話からなっており、一話読み切りの形式となっていますので、どこからでも読むことができます。
著者
編著は、堀麦水(1718~1783)です。
麦水は、金沢・竪町の蔵宿に生まれ、俳諧師・随筆家として活躍し、江戸・京坂にも流寓していました。
当時としては変化にとんだ自由で、知的な人生を送った人物といえましょう。いわゆる地方知識人だったのです。
歴史と史実
『三州奇談』は、その名のとおり奇談奇聞集ですので、狐狸、天狗などの話があり、不可思議な妖怪もが登場してきます。
それをとおして地域の伝承・伝説が語られるものもあります。
しかも、よく読んでゆくと、話の中に歴史・史実が組みこまれており、単なる奇談ではないことがわかります。
さらに麦水は、なんと加賀藩主の将棋の師匠として、藩主と席を同じくする機会もあり、家老との交流もありました。
特筆すべきは、ほとんどすべての話に、地名と年号が記されており、たんなる奇談ではなく、当時起きた事件をもとにしているらしい話が多くあるのです。
これによってわかる、特定された地域と年代によって、歴史面から読むことが可能となるのです。
『三州奇談』には、もととなる種本があったようですが、それを増補したのが麦水だと理解してよいでしょう。
内容
『三州奇談』の内容について『石川県史』には、
「荒唐無稽のことと思われるが、それは麦水自身のねつ造ではなく、そうした奇説怪談が民間にあったのを採集したことに、本書の価値と存在の理由がある」(日置謙)との評があります。
こうしたことから、ここには近世知識人として麦水がみた世界がある、すなわち近世の人々がなにをみて、それについてどのように考えたかを読みとることができるのです。
また、当時の人々が妖怪の出現をどのようにみて、感じとり、解釈していたかも推し測ることができるのです。
文献
『三州奇談』は、昭和8年に石川県図書館協会により翻刻され昭和47年に復刻されています。したがって崩し字を読むといった難しさはありません。
ただし江戸時代中期の書物ですので、すらすら読むというわけにはいかず、現代語に訳し必要があります。
私は、そうした作業を学ぶ機会がありましたので、思いついては一話づつこつこつと現代語に訳す作業をしています。
勿論、ところどころ難しくて歯が立たない部分がありますが、論文ではありませんので、私なりに解釈して楽しんでいます。
読んでいると面白い話がたくさんあります。
そんな話の現代語訳を、今後このブログで不定期で紹介していくことにします。
そんなわけで、今回はブログのタイトルにもなっている『三州奇談』のあらましについて書いてみました。
予告
このブログを始めた時に、ブログで『三州奇談』のことを書こうと思っていたことを、いま思い出したのです。
予告―
では、明日その第1回を掲載します。