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『日本仏教と西洋世界』

『日本仏教と西洋世界』

 

 

龍谷大学アジア仏教文化研究草書12『日本仏教と西洋世界』(法蔵館)という本を読みました。

 

日本仏教の近代化を語る上での主要なモチーフの一つは西洋化である。西洋の哲学や科学の移入を受けての仏教思想の再編成、近代仏教学の移入による学知の変貌、キリスト教の模倣をとおした仏教の「宗教」化、リベラルな教団体制への転換など、幕末を萌芽として本格的には明治期に、日本仏教の西洋化が急速に進んだ。そうした西洋化に携わったのは、西洋への留学僧や、西洋から到来したテキストや人物に多大な影響を受けた、ここの仏教者たちである。

 

「はじめに」には、このようにありました。

 

たしかに仏教は、ズルズルと明治期に入ったわけではなく、世のなかの西洋化の流れのなかで、試行錯誤を繰り返しながら、現代に至ったのです。

 

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この本は、そうした中で活動した12人についての研究を集めたものです。

南条文雄、島地黙雷、釈雲照、釈宗演など、その分野では著名な人物ということですが、私にとってはわずかに名前を聞いたことがあるかなという人物ばかりでした。

 

彼等はイギリスなどに留学して切磋琢磨したのですが、いずれもとにかくよく勉強していることがわかります。すごいの一言に尽きます。

このなかには、鈴木大拙も仏教の紹介者として入ってくるのでしょうが、この本ではとりあげられていませんでした。


この12人目のうちに、小泉八雲の名前が入っていたので、読んでみようと思ったのです(「怪談の時代」大澤絢子)。


小泉八雲は、明治期の日本において、日本文化の海外への紹介と理解に貢献した西洋人です。

八雲は、『怪談』をはじめとして、僧侶や寺での出来事、輪廻や無常観といった仏教思想と死後の世界、死者などをとりあげました。

 

ここには西洋人による日本文化の紹介という側面だけでなく、明治期の一連の怪談の流行、前近代へのまなざしがあると、筆者は述べています。

八雲は、近代のまなざしで迷信を排除し怪異を科学的に検証しようとした井上円了に対し、怪異を否定せず、非科学的なものを擁護しました。

 

「『怪談』は、怪異と恐怖によって近現代の日本人に前近代の日本を想起させ、ここには、ハーンと現代日本人双方の日本への憧憬が込められている」、筆者はこう結んでいます。


ここでは、明治後期から大正にかけての怪談流行にも触れています。
泉鏡花、夏目漱石、柳田国男、小川未明、森鴎外らの名前が出て来ます。

 

この本は、当然ながら仏教についての難解な部分が多くなっていますが、小泉八雲の研究は異色なもので、私にとっては興味ある一考でした。


明治初期の西洋化のなかで苦悩する漱石を、個人的には詳しく読んできましたが、仏教界でも西洋化と壮絶に対峙してきた先人たちがいたことを、具体的に知ることができた一冊でした。